DTMで擬似的なオーケストラサウンド

作編曲の勉強のためにアメリカ映画を題材に作曲中。

4-8~4-13(TROYを題材とした残り6曲)

「TROY」を題材に書いた曲。残りの曲をUPします。

4-8「アキレス2」

4-9「弔いの夜」

4-10「アキレス VS ヘクトル

4-11「トロイの木馬

4-12「アキレスとブリセイスの愛」

4-13「トロイ王国の崩壊」

 

 4-8「アキレス2」

この曲は、4-1「ギリシャの英雄、アキレス」のメロディとモチーフを使用している。彼の心の奥底に蠢く様々な感情を表現した。極端に遅いテンポ。♪=70。細かなパッセージなど使っていないので、DTMではごまかしがきかない^^
 
クラシックの和声学で言うところの禁則・完全五度の移行を多用している。しかし、この完全五度が映画的なものに非常にマッチする(ただし、これはあくまで私の考えに過ぎない)。規則は大切ではあるが、それにがんじがらめになってしまうとロクなことにならない。常に柔軟な思考が必要と思う。

 

今回の曲では、DTMではたしてどこまでテンポを落とせるものだろうか?という考えを実行した。音楽としてきちんと成立しているかどうかは疑問ではある。しかし、実験の実地と検証はできたと考える。

 

4-9「弔いの夜」

戦士が死ぬと目の上にコインをのせる。いわゆる「三途の川の渡し船代」だ。ギリシャ、およびローマ神話にも三途の川みたいなものがあり、死者はここを渡ってあの世(冥土)に行くわけだが、その時に、渡し守にお金を渡さないと渡し船に乗ることができない。つまり、成仏できずにあの世にもこの世にも属さない境界を永遠に彷徨うことになる・・・。

 

アキレスのいとこの死、ヘクトル王子の死などを悼む場面が映画に出てくる。そんなシーンをイメージして作った曲。

 

4-10「アキレス VS ヘクトル

アキレスとヘクトルの個人的な戦いに対応した曲。

今回の曲は「ギリシャの英雄、アキレス」のリズムを使用。もともとこのメインテーマ曲は、「戦い」というものも想定してあるリズムをバックに使っていた。それを今回流用。

 

本当はメロディ的なものなどいらないのかもしれないが、曲をあるサイトにUPするのでリズムだけというのも何やら気が引けた。そこで簡素なメロディをフレンチホルン、トロンボーン、トランペットで表現した。途中からアナログシンセ風の音がバックに流れている。この音は私が作った音であるが、非常に効果的なものではある・・・かな?

 

4-11「トロイの木馬

トロイ王国が崩壊するあるきっかけになった「トロイの木馬」。よく童話に出てくるような可愛らしいものではない。この曲はトロイ王国の崩壊という曲につながる曲でもある。

 

4-12「アキレスとブリセイスの愛」

主人公であるアキレスとトロイの巫女ブリセイスの愛を描いた曲。最初に書いた「ギリシャの英雄、アキレス」と共に一番作りたかった曲でもある。この手の曲をDTMでやろう!と考えること自体無謀かもしれないが^^ まぁ、挑戦ということで・・・。

 

4-13「トロイ王国の崩壊」

今回のシリーズの最後の曲。アレンジの基本は4-11"Trojan horse"(トロイの木馬)であり、この主題を使って曲は作られている。ただ、アレンジにおけるある要素を盛り込み過ぎた嫌いもある^^

 

一番最後に作った曲で今後の課題も見えてきた・・・。アレンジにおける技術である。現段階ではパーフェクトに曲を作るより(もとより作れないのだが^^)、作編曲の中での自分のウィークポイントや解決できないことなどをあぶりだした方がいい。これからもどんどん曲を作っていくが、その過程でおそらく解決されていくと思う。

 本当は1曲ずつ解説して掲載すべきでしょうが、今回はご勘弁を。「聴く」という行為自体かなりの労力がいると思うので、お暇な方には聴いていただきたい^^

E-6 ある小説が題材になった曲。

作編曲やオーケストレーションの勉強は人によって異なる。考えてみれば当然か?私の場合は映画だけでなく、小説、絵、詩なども音楽を作るための題材になる。

 

 この曲はマイケル・クライトンという小説家のある作品を題材に書いた曲。今回はアナログ的なベース音とオートパンされるある音で基本のリズムを作り、この上にフレンチホルン、クラリネットが和音を演奏。ここに第二ヴァイオリンとビオラが16音符のあるパッセージをのっける。

 

コード進行はとてもシンプルなもので、メロディもなるべく簡単なものにした。

Miroslav PhilharmoniK 2について

このソフト音源を使用してから3か月ほど経過した。このソフト音源に関心を持っている方はそれなりにいると思うので、私が気付いた点を少し書いてみることにする。

どんなジャンルの音楽を打ち込むにしても、オーケストラ音源は必要である。世の中には、「本物の音を目指す」ということで、数々の素晴らしいオーケストラ音源があるが、あまりにもその価格が高く、我々アマチュアがそう簡単に試せるようなものではない。

その点、IK Multimedia社のMiroslav Philharmonik(ミロスラフ・フィルハーモニック)2はアマチュアのユーザーでも比較的手が出しやすい価格であることはうれしい限りだ。

 

・壮大なシンフォニック・オーケストラ

 

このソフト音源が得意としているのは、やはり壮大なシンフォニック・オーケストラだろう。音自体が実際のホールで演奏したような質を持っているために、外部エフェクターなどを多用し、あれこれ模索する必要はあまり感じない。

特にオーケストラ編成を考慮し、その響きをDTMで追求したいという方にはかなり重宝すると思われる。要は、単に、ストリングスの良い音が欲しい、ブラスセクションの良い音が欲しい~という考えではこのソフト音源は使いこなせないと思う。ある程度オーケストラ・アレンジに慣れている方には是非おすすめしたい。

 

・やや不満が残る音のアタック感

 

ただ、私が使用した感覚では、とにかくストイックで切れのある、そんなサウンドにはMiroslav PhilharmoniK 2は少々向いていないのかもしれない。先に書いたように、音の質感自体がホールでの響きを念頭に置いているため、やや音がもっさりとした感じを受けてしまう。

特に金管楽器で顕著であり、歯切れのよいブラスセクションを必要とするような音楽にはやや不向きかもしれない。簡単に言うと「アタック感」が足りないのである。しかし、ここはアイディア、音楽制作ソフトの方でどうにかできる。私もこの部分でいろいろ試行錯誤してきた。

ただ、そのためには、音楽制作ソフトでそうするか、あるいは「音を加工」するような秘術も必要となってくる。

 

結論:クラシック系のオーケストラを念頭において曲作りをお考えの人には絶対入手してもらいたい。特にストリングス系に凝りたい方には最高に良い音源だ。しかし、相対的に歯切れのよい刺激的なサウンドを好み、そういった音楽を追求している方にはあまりおすすめできない。

 

 

以前UPしたオリジナル曲ではあるが、曲を聴いてもらい、さらに解説していきたいと思う。

 

1.ロビンフッド・メインテーマ

 

 

中間部の比較的長いトーンのブラス(トロンボーン、フレンチホルンなど)はMiroslav PhilharmoniK 2であるが、曲の前半のリズミックなブレスセクションはLogic proXに入っている音源だ。ただ、Logic proXのブラス・セクションでさえ、テンポに合った微妙なアタック感を出すために、ディレイやEQなどを使用している。

ストリングスはMiroslav PhilharmoniK 2。中間部のゆったりとした音に注目してもらえば、いかに音の質が優れているかわかると思う。ただし、一部現れる速いパッセージのストリングス(第一、第二ヴァイオリン)はLogic prpXの音だ。

 

2.弦楽曲(パパ、愛している!)

 

 

弦楽四重奏曲(音の厚みが欲しいため、一部コントラバスも使用)。こういった曲の表現はMiroslav PhilharmoniK 2の得意とするところだ。しかし、ストリングスの遅れを考慮して、各パートともにディレイを使用している。ピアノは若干ボリュームが小さいが、これもMiroslav PhilharmoniK 2。柔らかいクラシック的な雰囲気のピアノの音は素晴らしい!

 

3.弦楽をベースとした曲(アキレスの選択)

 

 

この曲の音は、すべてMiroslav PhilharmoniK 2だ。クラシカル的な表現をベースにした曲の打ち込みでは、このソフト音源は絶大な威力を発揮する。音的な空間処理(極端なエフェクターなど)は使用していない。先に書いたように、Miroslav PhilharmoniK 2の音はホールでのリバーヴを念頭において作られているため、このソフト音源のリバーヴなどを少しかけただけだ。後は音の定位(パン)を考え、ホール系リバーヴと共にある程度の奥行感を出すべく打ち込んだ。

 

つたない曲ではあるが、私の作った曲でMiroslav PhilharmoniK 2の可能性などを感じてもらえたと思う。前述のように、私はMiroslav PhilharmoniK 2を使い始めて3か月だし、DTMに復帰してからもやはり3か月しか経っていない。

私は極端なまでの本物志向の音はそんなに必要とは思っていない。Logic proXに入っている音源とMiroslav PhilharmoniK 2だけでもここまで音楽を表現できるのだ。ただ、シンフォニック・オーケストラの響きを大切にし、それをオリジナル曲の中で生かしていきたいと思うのならば、Miroslav PhilharmoniK 2は間違いなく戦力になるだろう。

ファンキーな(?)切れの良いサウンドの方に意識があり、相対的なオーケストラサウンドの響きをそこまで追求しない方には、Miroslav PhilharmoniK 2は必要ないかもしれない。他の音源を検討した方がいいだろう!

 

 

4-7「バトルシーン2」

前回の4-6「バトルシー1」に続く「バトルシーン2」。前回の者よりややテンポを上げてみた。実際のスコアは約250小節。打ち込むと7-8分くらいになってしまう。さすがに打ち込む気力が起きなかったので、主題部分を3回ほど繰り返しスコア上の展開部の一部を入れてみた。

音の入力や処理は作曲(スコアで完成)とはまた違うわけで、ここでは気力と集中力が本当に必要になる・・・。この意味において、私はまだまだ。

 

 

曲は、いつものように金管楽器が活躍する。この曲もメイン・テーマである「ギリシャの英雄、アキレス」を用いて、導入部に少し違うものを持ってきた。打楽器系の音を多用する予定だったが、打ち込みの段階で打楽器はおかず程度にしておいた。というのも、現段階の私の能力ではDTMで音楽を表現する場合、打楽器のリズムに頼ってしまう傾向がある。故に打楽器系はかなり割愛している。

 

4-6「バトルシーン1」

戦闘シーンなどの音楽は、小気味よいテンポや切れの良いものを好む人は多いと思う。しかし、それが全てではないと考える。今回UPした音楽は、テンポ自体はそんなに速いものではないし、切れの良いブラスセクションなどは当初から考えていない。

 

どちらかと言えば、地を揺るがすような地響き(?)を感じるような音楽にしたいと考えていた。最初の8小節でこの曲の主題は提示されていて、後に続くものはこのアレンジ変えにすぎない。音楽をよく聞く方はわかると思うが、この主題の提示部も「ギリシャの英雄、アキレス」から導き出されたものである。

 

映画音楽を作る面白さは、単にシーンに合う・・・今回は戦闘シーンということになるが・・・ものを作るのではなく、テーマから導き出されたものを使い、それを元に常に作ることにあると私は考える。これは、アマチュアなりにさんざん映画音楽を研究してきた結果、まず間違いない!と考えられる。
 
蛇足ではあるが、ブラスセクションの縦の響きを考える時に、アッパーストラクチャートライアドなどを理解していれば、音楽の幅はかなり広がる。いわゆる分数コード。特に属七におけるアッパーストラクチャートライアドは是非学んでいただきたいと思う。特にアクション系の音楽でブラスセクションを使う場合、このアッパーストラクチャートライアドは必要不可欠なものである。

4-5「禁断の愛~発端」

パリス王子とスパルタの王妃ヘレンの愛を描いた曲。この愛は許されぬ禁断の愛であり、物語のきっかけを作るものでもある。当然単に美しいメロディを書けばいい!というものではない。バックにはアキレスとギリシャ王の確執なども含まれているし、トロイ対スパルタ、ギリシャの戦いも予兆させるものである必要がある。また、物語のきっかけを作るものである以上、その色は「アキレスのテーマ」から導き出されたものでなくてはならない。ある統一された「色」がこの曲にも必要だった。

この映画は「英雄」を扱ったものではあるが、ある部分「ラブストーリー」でもある。
 


アキレスとトロイの巫女の愛は、パリス王子とスパルタの王妃ヘレンの愛とは多少位置づけが異なるため、彼らの愛に関する曲は別途作曲する予定。おそらく、この曲は新たなメロディを考える必要があるかもしれない・・・。

今回の曲はかなりスローテンポではあるが、こういった曲は映画では当然の如く用いられるし、どんなテンポの曲であっても、その曲独特のリズム感がある。ここでいうリズムとは単にビートを刻むリズムではない。リズムとはビートを刻むという短絡的なものではない、と私は思う。

 

今回のシリーズでは、繊細でありながら太いメロディ、アレンジを目標としている。また全曲通して「ある色」で統一しなければならない。難しいことではあるが、また作曲のしがいもあるというものだ!